夏の燈火



CircleMebiusという同人サークルさんより夏の燈火です。

最近は、本当に同人作品と商業作品との境界が無くなってる気がしますね〜。
月姫、ひぐらし・・・そして本作品。
結局、制作費とか、期間とかじゃなく、いい作品を作りたいっていう想いが、
本当の良作を誕生させる絶対条件なんじゃないないかな〜と思う次第です。


で、本作品ですが、上記の通り、同人ゲームとは思えないくらい、
すごく丁寧に作られています。
ヒロインは2人いまして、それぞれテーマが違うかな?

佳葉シナリオでは「生きることの意味」、湶シナリオでは「他者の理解」でしょうか。

どちらもいいシナリオでしたが、感動面では佳葉シナリオ、
シナリオの展開としては湶シナリオがそれぞれ良かったですね。

全体的に「AIR]のように夏の雰囲気が漂うゲームでした。(夏影っぽい曲もありますし)


では各シナリオ感想です。



佳葉シナリオ


こちらのシナリオでは、幼少編にて主人公は死んでしまいます。
そして8年の月日が流れ、主人公は意思を持った幽霊として日々を過ごします。

そんな中、ふとしたことから佳葉、湶と再会をするところから物語は始まります。

主人公が死んでしまうシーン、
主人公が自分の正体を佳葉に明かすところなどは感動的です。
ですが、ここから、さらに物語は展開していきます。

幼少時、玉藻前に取り付かれていた主人公。
玉藻前を憎み、村を守る使命を持った榊神社の当主・玲司によって狙われる羽目になります。

元々体の弱い佳葉。
玉藻前と同化してしまった主人公が近づけば精気を吸い取ってしまいます。
近づけば近づくほど佳葉の体を蝕んでいく現実。

主人公は決意します。
玉藻前とともに現世から、消え去ることを。

むふう・・・かなり感動できます。
「返品システム」は伊達じゃないですw

ただこのシナリオ単体でいうならば、玉藻前の掘り下げが足りなかったかな、と。
湶シナリオをプレイしてからならば問題ないんですけどね〜。

なんにせよ良シナリオですっ。



湶シナリオ


ちょっと意外だったのですが、
こちらのシナリオでは幼少編のシナリオも変わっていて、
主人公は死にません。

そのまま8年の月日が流れ、本編に入っていきます。

こちらは佳葉シナリオとは打って変わって、妖怪側の描写に重きを置いています。
湶シナリオとはなっていますが、いまいち描写が足りない・・・というか、
せっかく人間側と妖怪との決して相容れない関係をテーマとして描いているのだから、
ヒロインも妖怪側にした方が良かったんじゃないかな〜とか思ってしまいました。
白児や美津波など魅力的なキャラもいたわけですし・・・。 その方が主人公が妖怪に共感する理由にもつながると思うんですが・・。

とはいうものの、素晴らしいシナリオだったと思います。
個人的に妖怪寄りな主観で読み進んでしまいましたけどw
みんないい奴等です。牛鬼、鎌鼬、鵺・・・そして玉藻前。 玉藻前の最後の叫びには、ハッとさせられます。

人間側でも玲司の想いは心を打たれました。
もしかしたら人間側の考えが間違っているのかもしれない。
それをわかっていても、決して相容れることが出来ない理由。
数え切れない程の悲しみと怒りを背負っているからこそだったわけですね。

そういう意味では湶はヒロインとして影が薄かった・・・。
というか妖怪側と美津波に食われた感が強いですね。
結ばれる過程も唐突ですし・・・。


総評


良作。
テーマやシナリオは斬新なものではなく、どこかで聞いたことのあるようなお話。
ですが、丁寧な文章や、物語の導き方。読了後の爽快感。
それらが、ちょっと間違えると説教染みたシナリオ(特に湶シナリオ)になってしまうところを、
自然に共感出来るような気持ちにしてくれるんですよね。
理解のし易さも含めて、総じて「優しいシナリオ」でした。


プレイ後に気付いたわけですが、このCircleMebiusさん。
かの有名なAIRのDNML「sky」を作ったサークルさんなのです。
このskyというDNMLは、4時間超という膨大なボリュームで、
AIRの補完を独自な観点から行った大作です。
AIRプレイ済みで、「sky」を未プレイな方、
是非プレイしてみて下さい。